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標準偏差と標準誤差の違い|レポートでどちらを書くか

標準偏差はデータ1つ1つの散らばり、標準誤差は平均の値がどれくらいぶれるかを表します。標準誤差は標準偏差を件数の平方根で割った値で、同じ条件の測定を足していくと標準誤差だけが小さくなります。少数のカードを全通り引いて確かめ、レポートでの書き分けとExcelでの求め方をまとめました。

公開読了目安 約6分

この記事の要点

  • 標準偏差は1つ1つの値の散らばり、標準誤差は平均の値のぶれを表す
  • 標準誤差は、不偏標準偏差を件数の平方根で割って求める
  • 同じ条件で互いに影響しない測定を足すと、標準誤差は小さくなるが標準偏差は小さくなっていかない
  • データの散らばりを伝えるなら標準偏差、平均の確かさを伝えるなら標準誤差
  • レポートでは「±」の後ろがどちらか、件数はいくつかを必ず書き添える
目次

標準偏差は、データ 1 つ 1 つが平均のまわりにどれくらい散らばっているかを表します。 標準誤差は、そのデータから出した平均の値が、測り直すたびにどれくらいぶれるかを表します。

標準誤差は、標準偏差を件数の平方根で割った値です。 同じデータでも標準誤差のほうが小さく出るので、取り違えると散らばりを小さく見せてしまいます。

この記事では、少ない数のカードを全通り引いて、2 つの違いを数で確かめます。 標準偏差そのものの求め方は、標準偏差の求め方の記事で扱っています。

2 つは「何の散らばりか」が違う

同じ区間を歩いて、かかった秒数を 10 回測ったとします。

62・58・65・60・63・59・61・64・57・61(秒)

平均は 61 秒、不偏標準偏差は約 2.58 秒です。 これは、1 回ごとの記録が平均のまわりにどれくらい散らばっているかを、秒の単位で表した値です。

標準誤差は 2.58 を √10(約 3.16)で割った約 0.82 秒です。 こちらは、10 回の平均「61 秒」という値そのものが、どれくらいぶれうるかを表します。

何の散らばりかこの例の値
標準偏差1 回ごとの記録約 2.58 秒
標準誤差10 回の平均約 0.82 秒

もう 10 回測り直せば、平均は 61 秒ちょうどにはならないはずです。 その「平均のぶれ」を見積もったものが標準誤差です。

平均のぶれを全通り数えて確かめる

平均のぶれが本当に「標準偏差 ÷ √件数」になるかを、小さな例で確かめます。 2・5・8 と書いたカードが 3 枚入った袋を「全体」とします。

全体の平均は 5、全体の標準偏差は約 2.45 です。 袋から 1 枚引いて戻すことを n 回くり返し、出た数字の平均を取ります。

引き方をすべて並べると、2 回なら 9 通り、3 回なら 27 通りです。 それぞれの平均がどれくらい散らばるかを数えました。

引く回数 n引き方平均の散らばり2.45 ÷ √n
13 通り2.452.45
29 通り1.731.73
327 通り1.411.41
481 通り1.221.22

平均の散らばりは、どの回数でも 2.45 ÷ √n とぴったり一致しました。 平均を取る数が増えるほど、大きい値と小さい値が打ち消し合い、平均は 5 の近くに寄ります。

この一致は、毎回カードを袋に戻し、前に何が出たかで次の出方が変わらないときの話です。 実際のデータでは全体の標準偏差が分からないので、手元の不偏標準偏差で代わりに見積もります。

この袋の例は、なぜ n−1 で割るのかの記事で使ったものと同じです。 あちらは分散の偏りを、こちらは平均のぶれを数えています。

件数を増やすと、小さくなるのは標準誤差だけ

同じ全通りの引き方で、標本の標準偏差(÷(n−1))も平均してみます。

引く回数 n標本の標準偏差の平均平均の散らばり(標準誤差に当たる)
21.891.73
32.211.41
42.321.22

標準誤差に当たる列は、回数を増やすほど小さくなります。 標準偏差の列は小さくならず、全体の値 2.45 に近づいていきます。

標準偏差は、データそのものの散らばりを表します。 測る回数を増やしても、1 回ごとの記録の散らばり自体が縮むわけではありません。

標準誤差は、平均という「まとめた値」の確かさです。 件数を増やすほど、平均のぶれは小さくなります。

これは、同じ条件で、前の結果に左右されない測定を足していく場合の話です。 条件の違う測定が混ざったり、続けて測った値どうしが似通ったりすると、件数を増やしても標準誤差がこの割合で減るとは限りません。

また、平方根で効くので減り方はゆっくりです。 標準誤差を半分にするには、件数を 4 倍に増やす必要があります。

件数標準誤差(標準偏差が 2.58 秒のままなら)
10 回約 0.82 秒
40 回約 0.41 秒
160 回約 0.20 秒

レポートではどちらを書くか

どちらを書くかは、読み手に何を伝えたいかで決まります。

伝えたいこと書く値例
1 回ごとの記録がどれくらい散らばるか標準偏差「1 回の所要時間は平均 61 秒、標準偏差 2.6 秒」
平均の値がどれくらい確かか標準誤差「10 回の平均は 61 秒、標準誤差 0.8 秒」

クラスの点数の散らばりや、作業時間のむらを説明したいなら標準偏差です。 2 つの条件で平均が違うと言えるかを考える場面では、標準誤差が使われます。

授業の課題で指定があるなら、その指定に従ってください。 指定が無いときは、どちらを書いたかが読み手に分かることがいちばん大切です。

「±」の後ろには名前と件数を添える

「61 ± 2.6 秒」とだけ書くと、2.6 が標準偏差なのか標準誤差なのか分かりません。 同じデータでも、標準誤差なら「61 ± 0.8 秒」になり、印象が大きく変わります。

表の見出しや注に、次のように書き添えます。

  • 平均 ± 標準偏差(n = 10)
  • 平均 ± 標準誤差(n = 10)

件数があれば、読み手は一方からもう一方を計算できます。 標準偏差 2.58 と件数 10 が分かれば、標準誤差 0.82 は割り算で出ます。

グラフの「ひげ」も同じ

棒グラフの上に付ける縦線(エラーバー)にも、両方の流儀があります。 標準誤差で描くと、標準偏差で描くより線が短くなります。

線が短いグラフを見て、データの散らばりが小さいと読むのは誤りです。 グラフの注にも、どちらで描いたかと件数を書いてください。

Excel で標準誤差を求める

Excel には、平均の標準誤差を直接返す関数がありません。 データが A1 から A10 にあるなら、次のように組み合わせます。

=STDEV.S(A1:A10)/SQRT(COUNT(A1:A10))

STDEV.S は ÷(n−1) の標準偏差、COUNT は数値の入ったセルの数です。 空白のセルや文字の入ったセルは COUNT に数えられないので、件数を目で確かめておきます。

名前の似た STEYX 関数は、別のものです。 Microsoft のヘルプでは、回帰直線上の予測値の標準誤差を返す関数と説明されています。

STDEV.S と STDEV.P のどちらを使うかは、STDEV.P と STDEV.S の違いの記事で扱っています。 標準誤差の計算には、ふつう不偏標準偏差(STDEV.S)を使います。

手元のデータで両方を出す

平均・標準偏差計算ツールに数値を貼ると、件数と不偏標準偏差が並びます。 上の 10 回の記録なら、件数 10、不偏標準偏差 2.581989 と出ます。

標準誤差の欄は無いので、不偏標準偏差を件数の平方根で割ります。 2.581989 ÷ √10 で、約 0.8165 秒です。

標準偏差が大きいか小さいかを判断したいときは、標準偏差の大小の目安の記事が参考になります。

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参考・出典

本記事は上記の公的機関・公式情報源を参考にしています。最新の情報は各リンク先をご確認ください。

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